BCP策定推進フォーラム2021開催レポート ~基調講演1~

会社と社員を守る新型コロナウイルス対応
~感染者が出ても慌てないために~
国際医療福祉大学大学院 教授 和田耕治氏

新型コロナ対策の目的として求められていることは、一番に、医療逼迫、社会機能不全に陥らないで、感染者を抑制していくことになります。二番目は、医療、介護、教育といった社会機能への影響を最小化すること。三番目は、重症化のリスクが確認されている方の治療をきちんと行い、一般診療も行って、死亡者数を最小化することです。これは厚生労働省のサイトにも載っており、オミクロン株に対応した戦略となります。
オミクロン株を想定した中では、感染のピークをなるべくなだらかにし、その間にワクチン接種もしていくということが目的となります。感染者数はゼロにはなりませんので、職場でのクラスターを防ぐといったことが当面の目標になってくると思います。
感染対策のポイントですが、職場において、話をするところ、食事をするところ、集まるところをチェックし、十分に対策してください。そして、症状のある社員が安心して休めるようにしましょう。喉の痛み、咳、発熱の症状があれば休んでいただけるようにお話しをいただければと思います。
感染した社員への対応のポイントとしては、まず「症状があります」と報告してきた人に対して、管理職の方は「症状のあるうちは仕事を休んでください」と伝え、アポイントや納期など、業務上必要な調整を確認してサポートしましょう。症状があって病院に行き、「PCR検査を受けた」と報告してきた場合は、例えば発症前後の2日間で誰と話したかを確認されるといいと思います。「陽性だった」という報告を受けた場合は、「報告してくれてありがとう」、「しっかり休んでください」、「職場に戻れるように支援しますよ」と声をかけることが大事です。また、発症の2日前からの勤務状況や行動について確認し、分かる方には、感染者から正直に連絡していただくことになると思います。

復帰する社員は温かく迎えて

復帰する社員への対応は、感染した社員は発症から10日間が経って、また保健所から隔離をお願いされている場合には、解除された翌日から出勤できることになっています。10日以降で、本人が働ける場合に、戻っていただければと思います。後遺症のある方をどう復帰させるのかは、個別にご相談いただければと思います。テレワークで様子をみながら、というのもあるかもしれませんが、休ませる場合には賃金を払わないと不当になりますので、不当に長く休ませないようにしていただければと思います。後遺症などがある場合には、休職や傷病手当のような支援も可能でしょう。
そして何よりも、戻ってくる方は「もしかしてみんな自分がコロナにかかったと知っているのではないかな」などと不安な思いで出てこられますので、差別や偏見が起こらないように、温かく迎えていただければと思います。

「出来る」事例を丁寧に積み重ね

私たちは、非常に小さなリスクを大きなリスクのように思い、大きなリスクのあるものは小さく見る傾向、いわゆる「リスク認知バイアス」があると言われています。ですから、バランスの良いリスク認識を啓発することが、私たちの責務だと考えていかなければいけないと思います。
今後、社会でいろんなことが出来るようにしていくためには、医療の状況に応じて日常生活の中で出来ることを、感染拡大リスクの低いところから開放していかなければいけない。私たちのように現場と向き合っている者は、引き算型の「あれもダメ、これもダメ」ではなく、足し算型のコミュニケーションをして、「こうしたら出来る」という事例を丁寧に積み重ねていくことです。感染対策の主体は市民なので、市民とともに考えるのが大事です。
最後に、出来るだけ多くの方に、速やかにワクチン接種をやっていただき、感染の広がりにくい環境づくりを進め、感染してもお互いにカバーできるようにすることです。今まで真面目に感染対策していた人ほど、感染するとすごくショックを感じておられます。連帯や助け合いが大事だと思います。
「コロナに感染した人が出ました」と言われたら、ある意味、それをピンチと思わずチャンスと思って、「我が社の対応、職員を大事にする対応を、みんなに知ってもらういい機会」と思うぐらいの気持ちで臨んでいただき、丁寧に対応することで、みんなが「この会社で働いてよかったな」と思っていただければいいと思います。

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