BCP策定推進フォーラム2020開催レポート ~事例1~

週休3日でも工場稼働率を高める
~社員を守りながらの企業成長の道~
大成化工株式会社 代表取締役社長 稲生 豊人 氏

当社は、大成ホールディングス(東京都葛飾区)のグループ会社です。当社グループは、設立から96年、創立から107年になります。
グループ会社としてのBCP策定の取り組みは、大成ファインケミカル(千葉県旭市)で2009年に震災、2012年にはインフルエンザのBCPを作成しています。BCPで対応を想定することで、被災時に想定外の対応に集中できるというメリットは、これまで震災や台風、そして今回のパンデミックと肌で感じてきています。
当社大成化工は、顔料分散と機能性コーティング材の開発・製造・販売および受託加工の事業を行っています。危険物の化学工場で、特に第五類という自己発火するような危険なものを扱っています。事業所は千葉県成田市にあり、従業員は39名です。
当社は、昨年までBtoBの中間材をお客様1社に対し1仕様として開発・供給させて頂いておりました。ところが、コロナ禍で受託や開発テーマが中断し先行きがみえなくなり、3月には既存の売り上げも激減。お客様ごとの特殊仕様で横展開することができず、自力での売上拡大ができない中で、ゼロベースからコスト削減活動を始めましたが、コスト削減だけでは、経営の維持に限界がありました。未知のウイルスへの恐れもあり、お客様への貢献と、社員とそのご家族を守るという両立の問題は、経営的に非常に悩むところでした。
しかし、BCPのパンデミック対策に加えて様々な工夫をしながら、5月ごろから、今までの全ての枠を取っ払い、当社の強みを生かしてできることはないかと全社で考えました。新しいお客様に対する売上拡大、コストを削減しながらも生産性を伸ばす方法です。その結果、「営業」と「製造」での固定観念からの突破が実行できました。
「営業」の突破は、中間原料の枠を飛び出し、商品事業をやってくことです。中規模までの数量で出来ることがないだろうかということで、最終的には除菌アルコールを介護施設、病院、学校の皆さんに業務用としてお届けするに至りました。消毒液の個詰めができる機械や販売ルートもありませんでしたが、強みとして、化学の原料の調達や配合ができる。事業所が関東ですので、人口の多さという地の利の強みもあります。販売の工夫をした結果、現在では1200件ほどのお客様に販売をさせていただいています。
一方、「製造」の突破では、チームをA、Bの2班に分け、8時間労働を10時間での週休3日とし勤務曜日を分けました。その結果、社内の接触は15%ほど減り、製造の2班では9割方の接触が減りました。生産性の面では、8時間から10時間にすることで残業がほぼなくなり、時間あたりの生産が115%上がりました。また、土日稼働をすることによって設備の稼働率が上がり、新たな設備購入の必要がなくなりました。リスクを回避しながら生産性を上げ、販売品目に対応する体制ができたということです。

「変わらなければ」というエネルギー

当社では、今まで「平日8時間勤務」として従業員を採用してきました。これを変更する必要がありましたが、従業員組合の協力、そして経営幹部、総務がしっかり話し合ってくれたことで、新しい勤務体系を確立できました。経営も従業員もなく全社一丸になったということだと思います。その他、新しい商材のための品質部門、仕入れ部門、業務部門の対応や、苦情やクレームなども正直増えましたが、課題を乗り越え今に至ることができています。
その他のコロナ対策では、昨年の秋口からCO2の測定器をセッティングし、抗原検査キット・PCR検査キットのご家庭への配布を進めています。
当社で毎年開催している合宿の会議についても、参加者を最小限にし、本人の疾患、ご家族の高齢者、疾患をもたれている方については、できるだけ控えていただき、会議前後にPCR・抗原検査を全4回行うなど、対策の議論を慎重に進めています。コロナ禍よりも、コロナ後の方がおそらく大変な状況を迎えると想定しており、戦略会議をここで打っておかないと成り立たないという危機感を持っています。
変わりゆく環境の中で、どう適者生存していくか。お客様、近隣のみなさま、取引先のみなさま、そして社員のご家族との絆や思いが、「変わらなければ」というエネルギーになっていると思います。ピンチをチャンスに変えるべく、今後も進めたいと思います。

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