BCP策定推進フォーラム2019開催レポート ~全体総括~

東京都中小企業振興公社は11月19日、「経営の本質を理解し、災害時に任せられる『人財』が育つ〜究極の経営改善につながるBCPの構築方法〜」をテーマとするBCP策定推進フォーラムを都内で開催した。
第1部では、エバーグローイングパートナーズ株式会社代表取締役の佐藤将之氏、ニュートン・コンサルティング株式会社代表取締役社長の副島一也氏がそれぞれ基調講演を行った。第2部のパネルディスカッションでは、川崎陸送株式会社取締役社長の樋口恵一氏、株式会社協和精機代表取締役副社長の立松和也氏、株式会社リリーフ(アネシスグループ)執行役本部長の前田優氏のパネリスト3人に、コメンテーターとして副島氏を加えた計4名が登壇した。コーディネーターは株式会社新建新聞社リスク対策.com編集長の中澤幸介氏が務めた。

第1部 基調講演1

アマゾンジャパンの立ち上げメンバーでもある佐藤氏は「アマゾンの強さの秘訣は安全にあり~当事者意識を持って安全の仕組みを作れる人財が成長のカギ~」と題し講演。
「アマゾンではさまざまな会議が行われたが、その最初には、セーフティーティップスといって、安全にかかわる話を最初に発表しあう」と、アマゾンが安全を特に重視していることを説明。理由として、顧客満足を高めるためにはスピードが何より求められ、そのためには安全の作業環境が不可欠であることを強調した。こうした安全環境作りを、従業員の善意に頼らず、仕組みに落とし込むのがアマゾンの文化と説明した。例えば、アマゾンでは、入社日に安全講習を受けないと倉庫の作業現場には入ることができず、最初に「倉庫を走らない」「声がけ」といった安全10カ条の説明を受けることや、倉庫内での行動について学ぶことが義務付けられていること、などを紹介した。

第1部 基調講演2

副島氏は「BCPは人財育成の最高のツール~数百社のBCP支援を通じて見えてきた効果的なBCP活動と人材育成のつながり~」と題し講演。
ニュートン・コンサルティングの1500社・50団体以上の支援を通じた経験から、「実行力のあるBCPは、人材育成に直結すると考えている」と語った。さらにBCP活動を劇的に効果的にする5つの鉄則として、(1)社長自らが指揮を執り、先頭を切って活動する。(2)社内で最も活躍するキーマネージャーたちが推進する。(3)現場を巻き込み社員全体で活動する。(4)自社独自のやり方を自ら考えて活動する。(5)何年も何年もやり続ける―の5つを紹介。「5つの鉄則を順番に実行し、サイクルを回す。これによって実行力のあるBCP活動と同時に、人材が育つ」と説明した。

第2部 パネルディスカッション

後半のパネルディスカッションでは、先進的な取り組みを行う中小企業が自社の取り組みを紹介した。
川崎陸送株式会社取締役社長の樋口恵一氏は、自社の強みとして溶けたチョコレートの運送ができることを紹介。倉庫や輸送中の温度管理として、とりわけ停電対策が重要であることを説明した。停電対策として、韓国製の発電機を調達したことを述べ、「注文から3カ月で届き、日本製の3分の1の価格。ディーゼル式で、ディーゼル車や機器を多く取り扱う当社でもメンテナンスをしやすい」とその利点を説明した。
金属の切削加工を手掛ける株式会社協和精機代表取締役社長の立松和也氏は、2017年にBCPを策定したことを紹介。「全社員が取り組むことで、責任感と成長にもつなげることができると考えた」と述べた。訓練や見直しなどBCPに関する年間スケジュールを組むほか、備蓄は、いざという時に運びやすいよう、非常食や水をタイヤ付きケースに入れて出入口のそばに置いたり、取引先への緊急連絡票を用意したりするといった取り組みも説明。「今後は太陽光発電と蓄電池を工場に置き、工場だけでなく地域に電力供給を行うことで社会貢献したいと考えている」と語った。
熊本市に本社を置き、グループ企業が建てた戸建住宅のアフターメンテナンスを主に行う株式会社リリーフ(アネシスグループ)執行本部長の前田優氏は、熊本地震の対応について説明。「BCPで決めた通り、組織での対応ができた」と述べ、社員が集合し、戸建オーナーに対し安否確認電話を実施したうえで全オーナーを訪問し被害状況確認を行った他、協力業者会を招集し、被害のあった家の緊急対応や応急処置の対応をしたことを語った。「かつては年4回、今でも2回一斉オーナー訪問を実施しており、その経験が災害対応にも役立った」と述べた。また井戸や発電機の他、熊本市以外に福岡市と水前寺市に食料や水の他ブルーシートなど住宅資材も備蓄していることなども説明した。

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