BCP策定推進フォーラム2017 事例レポート④

事業継続マネジメントシステム(BCMS)を活用して、経営を強化する
株式会社生出 代表取締役社長 生出治氏

株式会社生出 代表取締役社長 生出治氏

弊社では、軟質プラスチックによる製造業を営んでおり、包装設計や包装技術サービスを含めた商品サービスの提供を行っています。現在、年度計画のなかでマネジメントシステムの見直しを行っており、BCPについて改めて計画全体を見直して修正しています。見直しの理由は、全体の整備が進んできた一方で、マンネリ化し、システムとして形骸化する危険性があると感じたためです。ただ継続するだけでなく、少しでも向上させていかないといけません。

BCP見直しのポイント

BCP見直しのポイントとしては「機能する組織を作る」「本当にどんな状況にでも対応できるような、対応力や行動力をつけるための要員を養成する」「業務の復旧や復興に必要なリソースをどうやって確保していくか」の3点です。

機能する組織を作るための決め手は、災害対策本部のメンバー構成です。機械的に選任するのではなく、やる気や行動力のあるメンバー、これから幹部社員として期待しているメンバーを選任しています。また、メンバーを育成し、組織として判断力、対応力、行動力を向上させる。そして、実践的で実効性のあるBCPにしていきたいと思っています。

また、業務の流れを改めて整理することで、通常業務のなかでも改善点を発見し、あるいは災害時にも対応できる業務の方法に変更するように業務改善を進めています。そのほか、数年前から関東の4社と代替生産ネットワークを作る代替戦略に取り組んでいます。BCPは結果的にサプライチェーンの強化に繋がることから、今後もサプライチェーンの強化に向けて進めていきたいと思っています。

BCPの取り組みの率直な感想としては、お客様から評価されることで、従来の取引の充実に繋がり、非常に役に立つと考えています。また、経営幹部や現場社員の育成に効果的であると実感しています。BCP策定の過程では、あらゆる場面で会社全体の視点で意思決定を行う必要があり、経営的な観点を深めるよい機会になります。そして、BCPは経営者の思いでもあるわけです。思いを共有することで、経営者の立場に近づいてくれるのではと考えています。

BCPは組織風土にも良い影響

また、BCPは組織風土にもよい影響を与えるということを感じています。会社全体として「品質不良は出さない」「納期の遅れは出さない」ということに取り組んでいますが、社員が一生懸命考えながら答えを出そうとするなかで、実感として、顧客満足の大切さ、他部署とコミュニケーションをとる重要性などを認識するようになりました。結果として、主体性や考える力、チームワークの形成に非常によい影響をもたらしています。これらは実践的なBCPの能力向上に繋がるものと思っています。

BCPを取り込むことで顧客から評価されて、受注に繋がれば、社長の一言よりもはるかに社員のモチベーションを刺激します。BCPのメリットは、収益向上に寄与し、経営全体に及ぶわけです。

一方、課題としては、「定着し辛い」「マンネリ化しやすい」「形骸化しやすい」ということです。BCP自体は無味乾燥なものです。本当の意図を理解しないと継続する気持ちになりません。では、どうやってBCPを継続、共有、浸透させられるか。

それには、しっかりとした方針や仕組みが必要です。なぜBCPが必要なのかを理解するための仕組みです。それから、実践する仕組みが必要です。演習・訓練を定期的に実行しなければ、本当の意味で定着はしません。「理解するプロセス」と「実行するプロセス」を交互に繰り返すことが、BCPの定着と、しっかりした教育・浸透には重要です。ただ、仕組みさえ作れば自然と回るかというと、そうではない。「BCPはいざという時の備え」という経営者の意識や捉え方を変えなければ、BCPの浸透は始まりません。

そのためには、BCPを日常のマネジメントシステムの中心に位置付けて、当たり前の価値観として意識づけることです。そうすることで、重要であるけれども日常の経営とは異なるという発想がそもそも生まれず、負担感もなくなるのではないかと思います。

結論としては、BCP策定のときに、災害対策だけでなく、関係強化や業務改善、社員教育、社員のリスクマネジメントといった、企業を強くするBCPを作るという目的意識を一緒に作っていくことが、理念の実現や業績向上に繋がると考えています。

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