【感染症対策BCPの好事例紹介】
株式会社メディア・マーケティング・ネットワーク
取締役 中畑 千弘 氏

Q.会社の概要を教えてください。

メディア・マーケティング・ネットワークでは、企業がマーケティングを行う際にWEBなどでアンケートを取ったり、サービス利用者にインタビューをして満足度を測ったりと、多様な調査業務を行っています。メディア関連の取引先も多く、リサーチ対象者を探すリクルーティングや、メディアに広告を出した場合の広告効果測定も主要事業の1つです。
創業した30年前は、アンケートやインタビュー対象の方に会場に来ていただいたり、郵送やFAXで調査をしたりしていましたが、今はインターネットを活用するケースが多いです。とくにコロナ禍以降は、対面を避けるため、zoomやTeamsなどのオンラインツールでインタビューをする機会が増えました。当社の事業はクライアントのニーズと、時代の変化にすぐに対応していく必要がありますね。

中畑取締役

Q.なぜBCPに取り組もうと思ったのですか?

大きな契機となったのは、新型コロナウイルスの感染拡大です。多くの会社がそうであるように、当社も事業を継続するにあたって最重要となる経営資源は人材。とくに当社は社員数8名の小さな会社なので、メンバーのうち5人も倒れてしまえば、企業活動に大きな打撃があります。そのため、早急な対応が必要だと感じて2020年の8月にBCPを制定しました。

Q.策定したBCPの概要を教えてください。

当社のBCPでは、半数以上の社員が新興感染症に罹患して、2週間出社停止になるケースを想定しました。事業のなかでもクライアントのニーズが高く、財務影響度が高い「リサーチ事業」の継続を最優先に進めます。
BCP発動後に立ち上げる対策本部では、対策本部長の社長が社員の出社判断や、翌日以降の営業方針を指示。会長や取締役などの対策本部メンバーは、情報収集や社員への情報伝達・共有、感染者からのヒアリングなど、各自で役割を担い、行動します。
また、各部門ごとに具体的な「事業継続策」も定めました。当社の事業継続策は、担当者(誰が)・内容(何を)・手段(どうやって)・連絡先(誰に)という形で、当事者の行動を詳細に指定しているのが特徴です。
たとえば、感染症に罹患したり、濃厚接触者になったりして出社制限を受けた社員の場合は、メールやオンラインで、自身の業務をほかの担当者に引き継ぎます。加えて、社外のクライアントに電話・メールで引き継ぎの報告をする、という流れも記載しました。
そして、策定したBCPは、全社員に職場用と自宅用に1部ずつ配布しました。また、コンサルタントの方にフォーマットをお借りした「ポケットBCP」も活用しています。「ポケットBCP」とは当社のBCPを簡略化して記載した1枚の紙を5つ折りにして、小さな冊子にしたものです。いざというときにすぐに確認できるのがメリットですね。

Q.BCP策定過程で苦労したことは何ですか?

コンサルタントの方にお聞きしたのですが、当社はほかの企業に比べて、感染症対策のBCP策定に取り組んだタイミングが、かなり早かったそうです。そのため、他社の事例がなく、社会全体でも感染症への対応策を模索していた時期だったので、備える範囲を見極めるのが大変でしたね。
手探り状態ではありますが、全社員が新興感染症に罹患したケースや入院者がいるケースなど、多様なシチュエーションを想定して作成しました。

Q.現状のコロナ禍において、計画に基づき具体的に行っていることは何ですか?

日頃行っているのは、感染予防対策。BCP実践促進助成金に申し込み、アルコール消毒液や、非接触型体温計、フェイスシールドなどの感染症対策アイテムを購入しました。

オフィス入口に設置されたアルコール消毒液

そのほか、リモートワークの導入範囲も広げています。2019年までは、自社の中核事業でオンライン会議ツールを使うケースはなかったのですが、現在はユーザーインタビューやリサーチ、取引先との打ち合わせにも活用しています。社内のデータ共有も、メール添付だけでなく、クラウドサービスを利用しながら、どこでもデータが引き出せるように調整しました。全社員がリモートワークをしているわけではありませんが、BCPの策定前後でもっとも変わったのは、どこでも仕事ができる環境になった点ですね。

Q.日常業務でBCPを策定した効果はありますか?

リモートワーク環境の整備は、業務の効率化につながっています。コロナ禍の影響で社員が出張する機会が減り、“移動コスト”が格段に下がりました。これまで移動にかかっていた時間をほかの業務にあて、作業効率もアップしているので、結果的に働き方改革にもつながっていますね。
また、大手のクライアントや取引先と、足並みをそろえてリモートワークに対応できたので、企業としての信用度も高まりました。

会議室にはパーティションを配置し、飛沫防止に務める

Q.公社の支援に対するご感想は?

公社の支援を受けて社内だけで検討したときには出てこなかった予防策や、代替策、検討項目に気づくことができました。また、コンサルタントの方から「BCPは経営層だけでなく、社員への浸透も重要」というアドバイスがあり、実務を担う社員も交えてワークショップ形式で策定しました。そのおかげで、当社にとってかなり実用的なBCPとなっています。

Q.BCPを今後御社の企業経営にどう生かしたいですか?

今回のBCP策定の経験を通して“備える重要性”を肌で感じました。もちろん、何事もなく過ごせる世界が理想ですが、実際に災害が起きたときに「BCP」という行動指針があると安心ですよね。今後も、策定した計画に基づいて行動できるように、演習や訓練を繰り返して対応力を向上させていく予定です。