【感染症対策BCPの好事例紹介】
株式会社ライズビデオエイティ
代表取締役社長 上田 明 氏

Q.会社の概要を教えてください

ライズビデオエイティは、1980年創業の映像制作会社です。企業や官公庁のPR映像や会社案内、CMなどを制作する部署と、結婚式などのブライダル関連の映像・編集を担う部署の2事業をメインで行っています。

上田代表取締役

Q.なぜBCPに取り組もうと思ったのですか?

私がBCPの策定に関心を持つきっかけになったのは、東日本大震災の経験でした。震災発生当時、責任者が現場で対処していて連絡がとれなかったり、社員に適切な指示が出せなかったりしたので、企業として被災したときのマニュアルの必要性を感じたのです。
また、当社の取引先は社会的な影響が大きい官公庁や企業が多いので、我々がBCPを策定していれば、クライアントも安心して仕事を任せられるのでは、という想いもありましたね。
そして今回は、策定した時期が2020年のコロナ禍だったこともあり、社員たちの身近にあるリスクとして、新興感染症を軸に策定しました。

Q.策定したBCPの概要を教えてください。

当社の事業のなかでもっとも重要なのは、やはり「映像コンテンツ制作」です。そのため、現場に行く人員が感染症に罹患してしまったり、濃厚接触者になってしまったりした場合の「事業継続戦略」を定めました。
企業・官公庁の映像制作は、案件によって撮影スタッフの人数は変動しますが、2〜10人体制で行います。撮影の前日に感染症の罹患者が発生した場合は、まず関係者に発災の連絡と謝罪を行い、撮影日の延期を提案。延期した日程から逆算して、対応できる代替スタッフを派遣します。関わる人数が多いので日程の再調整が難しいですが、それでもクライアントは感染のリスクを下げるために変更に応じてくれるケースが多いですね。
一方、婚礼映像の制作は、結婚式の日取りが決まっているので、私たちの都合で変更することは不可能です。そのため、撮影当日に発災した場合は“必ず”代替スタッフを現場に向かわせます。式場に行くスタッフは2〜4名なので、まずは感染者の所属部署の中で、対応可能な社員の有無を確認。もし部署内にいなければ、ほかの部署で同じ業務が行えるスタッフを探して派遣します。
最近は、業務の代替ができる人材を増やすために、社内で勉強会を開き、スタッフのスキルアップを図っていますね。

Q.BCP策定過程で苦労したことは何ですか?

当社では、スタッフたち本人に部署ごとのBCPを策定してもらいました。
各部署に任せた理由は、私が作ったBCPを受け取るよりも、自分たちの経験を元に策定した内容のほうが、いざというときに使いやすい、と考えたためです。
なので、担当者にBCPの策定をお願いする際には「気軽に作ってほしい」と伝えました。最初から完璧なBCPを作るのはとても難しいので、現時点で社員一人ひとりが緊急時の参考になる内容にしてほしかったのです。今回のBCP策定でもっとも苦労したのは、通常業務をしながら策定に取り組んだ責任者や担当者ですね。

Q.現状のコロナ禍において、計画に基づき具体的に行っていることは何ですか?

日頃行っているのは、主に感染症対策です。コロナ禍以前は、同じ現場に行くスタッフ全員が一台の車に乗り込んでいましたが、今は車で行く人と公共交通機関で行く人に分けて現地に向かっています。分散させて感染のリスクを下げ、途中で電車か車のどちらかにトラブルがあっても、一方は現地に行けるリスクヘッジにつながっています。
そのほか、社員からの提案を受けて「PCR検査キット」も全社員分常備しています。これにより、感染者が出た際や、クライアントに求められたときにすみやかに対応できる環境を整えました。

手指の接触が多いエレベーターホールにもアルコール消毒液を設置

Q.日常業務でBCPを策定した効果はありますか?

社員が能動的に策定したおかげか、何かあれば各部署・各個人が自ら動いて対処する姿を目にする機会が増えました。たとえば、スタッフの家族が感染症に罹患した場合は私に報告が来て、濃厚接触者の社員を休ませます。状況を把握して、該当者がいた場所を消毒するという処理も、自主的に行ってくれていますね。
私が細かい指示を出さなくても、スタッフ自身が迅速に対応してくれるようになったのは大きなメリットですね。

Q.公社の支援に対するご感想は?

初めは私が公社のセミナーに参加し、専門家の方にご指導いただきました。とても勉強になると同時に、完璧なBCPを策定する大変さも痛感しましたね。セミナーの参加はBCPの策定を自社で行う、という方針を定めるきっかけになりました。

Q.BCPを今後御社の企業経営にどう生かしたいですか?

感染症だけでなく、地震や風水害など大規模な自然災害が多発している昨今、いつ業務が止まっても不思議ではない時代です。そして、どんな状況下でも企業活動を継続するにはどうすべきかが問われている。その解決策のひとつがBCPの策定ではないでしょうか。
今回策定した内容はあくまで“たたき台”として、今後も自分たちの経験から学んだことを一つひとつ反映し、ライズビデオエイティらしいBCPを作っていきたいです。

社屋外観。ライズビデオエイティには、2022年3月現在42名の社員が在籍している