【感染症対策BCPの好事例紹介】
アジヤアルミ株式会社 代表取締役社長 高橋 正 氏

Q.会社の概要を教えてください。

当社は紙・フィルム等のコーティングや薬品等のアルミチューブ製造、アルミ製品の加工卸を行っている企業です。創業は大正10年で、2021年で創立100周年を迎えました。東京に本社、埼玉に流通センター、愛知に営業所、栃木と福島にそれぞれ製造工場を持っています。主な取り扱い製品は、半導体の生産に使うキャリアシートやスピーカー・イヤホンの振動板、軟膏用のアルミチューブなどです。
現在、当社を代表企業とし、共栄化工株式会社、アジヤ運送株式会社、株式会社アクスと共に「共栄金属工業グループ」を形成しています。

高橋正代表取締役社長

Q.なぜBCPに取り組もうと思ったのですか?

東日本大震災のとき、当グループの事業に影響がありました。ガソリンが調達できなくて商品の配送が間に合わなかったり、福島の白河工場では機械の一部が破損して稼働できなかったりという被害が発生したのです。昨今は記録的な台風や感染症の流行もあり、いつ事業が止まるか分からない状況なので、備えておく必要があると感じていました。
また、弊社のアルミチューブは、医薬品用として使われることが一番多い主力製品の1つ。医薬品の流通を止めるわけにはいきませんし、たとえ被災してもすぐに再稼働しなければならないという使命感も持っていました。
そうした危機意識が高まっている折、ちょうど東京都中小企業団体中央会から策定支援の声掛けをいただいたのです。その際、当社だけでやるのではなく、共栄金属工業グループとして事業継続計画を作ったほうがより強力になると考え、グループ一丸となって取り組みました。

Q.策定したBCPの概要を教えてください。

当社では「緊急時に相互扶助できる体制の構築」を目指し、「基本方針」「BCM(Business Continue Management)運用体制」「緊急事態の発動要件・体制」「想定リスク・最新ハザード情報」「想定被害」「緊急連絡・安否確認体制」を策定しました。
とくに、要員・場所・情報機器といった資源は限りがあります。しかも、感染症の拡大などで要員が不足してしまえば事業を動かせない。グループ各社が自社の最優先事業を判断し、中核となる事業を止めないための対策を考えました。
アジヤアルミでいうと、私が選定した中核事業製品の生産を早期に再開することが肝です。そこで、生産管理を「労務」「安全衛生」「施設」「設備」「在庫」「物流」「情報」の7項目に分け、各部門が非常時でも問題なく機能するよう、それぞれの対応を定めています。
グループ会社が取り組んだBCMを紹介すると、物流の中核を担うアジヤ運送は、緊急時における車両や燃料の確保手順、運送経路の複数化などを明確にし、中核製品の物流が滞らないように備えています。

Q.BCP策定過程で苦労したことは何ですか?

事業内容が違えばリスクに感じる部分も変わりますから、緊急時マネジメントが画一的では機能しません。各社のBCPを、誰もが納得できる内容にまとめ上げる作業は苦労しましたね。
各社、各事業部へ何度も足を運んでは話し合いを重ねて、なんとか調整できました。もちろん、運用していくなかで改善点が見つかったら、都度改定していきます。

東京都中小企業団体中央会の講師を招いて開かれた、BCP会議の様子

Q.現状のコロナ禍において、計画に基づき具体的に行っていることは何ですか?

コロナ禍においては、営業部門や本社部門の従業員は大多数がテレワークに従事しています。そのためにテレビ会議システムや情報の共有方法などのDX化を急ぎましたし、現在も取り組んでいます。
製造部門の従業員は工場でなければ仕事ができないので、感染症対策を行いながら出社しています。内容は、出勤前の検温、手洗い・消毒の徹底、パーテーションや二酸化炭素濃度測定器の設置、頻繁な換気など、ごくごく基本的なことばかりです。しかし、テレワークもそうですが、慣れてくると油断してしまうので、気を抜かずに励行していきたいと思っています。

感染症対策をしながら稼働し続けている福島県の白河工場

Q.日常業務でBCPを策定した効果はありますか?

グループ会社間の交流が増えました。人的交流も含め、盛んに情報交換をしているようですね。
お客様に対しては、今まで以上に安心感を抱いていただけるようになるのでは、と思います。危機管理能力の高い企業として信頼度が増すことで、受注アップにもつながっていくのではないでしょうか。

Q.BCPを今後御社の企業経営にどう生かしたいですか?

今後の設備投資や調達先を考える際に、BCPの観点からの検討も必要だと考えています。また、災害以外の原因による受注減少などもリスクとして備えていかねばなりません。
当社は2021年で創立100周年を迎えました。今後は200周年に向け、あらゆる危機を乗り越えて事業を継続していきたいと思っています。
そのためにも、グループの全社員に「事業継続」の意識が、当然のように根付いていってほしいですね。私も社長として社員たちに志を浸透させられるよう、各事業所を訪れた際に必ず行っている一人ひとりへの声掛けを、これからも続けていきます。