【感染症対策BCPの好事例紹介】
創研情報株式会社 代表取締役 阪本 浩朗 氏

阪本代表取締役

Q.会社の概要を教えてください。

当社はシステム開発や、システムの構築・運用を行うIT企業です。従業員の働き方は、お客様先に常駐して作業を行う働き方と、社内でお客様から請け負った業務を担当したり、自社サービスを開発したりする働き方の2つに分けられます。現在は7割ほどの社員が、お客様先に常駐しています。

Q.なぜBCPに取り組もうと思ったのですか?

元々2017年に東京都中小企業振興公社のサポートを受けて、地震を想定したBCPは策定していました。しかし、一昨年から新型コロナウイルスが世界的に感染拡大を起こしているなかで、「感染症対策も含む”オールハザード型”のBCPに変更する必要がある」と考えたのがきっかけです。

Q.策定したBCPの概要を教えてください。

基本方針は「人命を守る」「資産を守る」「事業の継続」の3つ。これは地震対策のBCPと同じですが、感染症の場合は、出社が難しい状況でも業務にあたれるよう、リモートワーク環境の整備が必要です。そのために、円滑に連絡を取るためのスマートフォンを、全社員に支給しました。緊急時は、リモートワークが行える部署は在宅勤務を徹底。来客対応などがあり出社が必須の部署でも、週に2日はリモートワークをするようにしてもらいます。
ハード面を整えたうえでさらに行ったのが、業務のデジタル化です。紙の資料を電子化したり、オフィスにあるPCと個人用のノートPCをつなげたりして、社外でも、社内にいるときと同じようにデータが扱えるようにしました。
また、どうしても出社が必要な業務も、オフィスにいる従業員に代行してもらうように定めました。そのための業務内容のマニュアル作りも進めています。

オフィスで働く社員、時にリモートワーク中の社員の業務代行も担当する

Q.BCP策定過程で苦労したことは何ですか?

今は地震と感染症を想定したBCPを策定していますが、この2つだけでも、分かりやすく文書にまとめるのには苦労しました。今後、水害や火災などあらゆるリスクに備えてBCPを策定していきたいと考えていますが、内容が増えれば増えるほど、内容の整理が難しくなっていくのかなと思っています。

Q.現状のコロナ禍において、計画に基づき具体的に行っていることは何ですか?

現在、大半の社員がリモートワークを実施し、東京本社の出社率は1割ほどになっています。今までは郵送でやり取りしていた請求書なども、これを機にデータで取り扱うようにしました。
他者の業務を代行するためのマニュアルは、じつはBCPを策定する以前から取り組んでいたものです。もともと「業務を個人に依存させない」という心がけから作っていたのですが、社外での作業が増えてきた今、実際にマニュアルが活用されて以前から進めていた取り組みが加速しているように感じています。
また、備蓄品の見直しも行いました。この情報もデータで共有できるよう、自社サービスの「kuranosuke」を利用して管理しています。

受付にはアクリル板、消毒液、非接触の体温計を設置

Q.日常業務でBCPを策定した効果はありますか?

緊急時の備えがなければ、きっと“全員出社”という選択肢しかとれず、社員たちを危険に晒していたかもしれません。BCPを策定していたお陰でスムーズにリモートワークに移行でき、安全が確保できました。その成果なのか、当社では現時点で、1人の感染者も出ていません。

Q.公社の支援に対するご感想は?

一番有り難いと感じたのは、コンサルタントの方がサポートしてくれるという点です。セミナーの説明もためになりましたが、実際に自社の業務に合わせた対策を考えようとすると、分からない部分も多くて……。コンサルタントの方に何度も質問しながら一緒にBCPを作っていけたので、とても助かりました。

Q.BCPを今後御社の企業経営にどう生かしたいですか?

今回、感染症のBCPを策定するにあたり、まず始めに取り組んだのが地震対策用のBCPの見直しでした。感染症対策用BCPの参考にするために見直していたつもりでしたが、意外に「この項目は情報が古いので更新しないと使えない」「ここの記載が分かりにくい」など、改善点が見つけられました。
たとえば、各対応の指揮を執る責任者を決めていたのですが、万が一のとき、その責任者が必ず指示を出せる状況にいるかどうかは分からない。有事の際に本当に使えるBCPにするなら、その点も個人に依存しない形にしていくべきだと考えています。
また、社内にあるサーバのクラウド化やオフィス移転も検討しており、物理的な安全確保を行い、社員が安心して働ける環境づくりにつなげることで、お客様に対するサービス品質の向上を目指しております。