【感染症対策BCPの好事例紹介】
株式会社アドメディア 代表取締役社長 鈴木 隆 氏

鈴木代表取締役

Q.会社の概要を教えてください。

当社では主に、医薬関係のコンテンツ作成を行っています。メディカルライティング部は、医療従事者向けの専門書や患者向けパンフレットなど印刷物の編集・制作。そのほか、医薬関連Webサイトの企画やデザイン制作、更新、サーバーの保守といったトータルサポートも行います。
小さな会社ですが、お客様に恵まれて30年以上続けてこられたと感じることは多いですね。

Q.なぜBCPに取り組もうと思ったのですか?

とくに昨今は、新型コロナウイルスや、その他感染症の医療従事者向け記事作成に携わり、業務上、医療機関に行く機会もあるので、感染症は身近な問題でした。何より、医薬関連の事業に関わっているため、非常事態下でも事業を止めてはならないという社会的責任も強く感じています。感染状況が刻々と変化するなかで、社員に感染者が出た場合を想定したBCPを作成する必要がある、と考えたのがきっかけです。

Q.策定したBCPの概要を教えてください。

当社のBCPの発動基準は「感染症の流行により緊急事態宣言の発令等が懸念される事態に陥った場合」です。最優先にしたのは、社員の生命・安全の確保。具体的には、緊急事態宣言発令に伴い、社員の出社が難しい状況のなかでリモートワークが行える環境を整えています。もともと一部の業務はリモートに対応していましたが、今回の策定を機に、リモートの範囲を広げました。たとえば、社内に紙でのみ残っていた資料をスキャンしてデータ化し、個人のパソコンに入れたり、共有のサーバーを社外からも確認できるクラウドにアップしたりして、全員がリモートワークに対応できるようにしています。
ふたつめは、社員本人やその家族が感染症に罹患した際に、業務を社内外の代替者に委託する仕組みづくりです。これまで、公益財団法人などのお客様のHPの更新は、案件ごとの担当者が行っていました。一人ひとりがお客様との関係性を築いているため、代えのきかない存在です。もちろん信頼関係を深めるのはとても大切なことですが、社内での情報共有ができていないという課題がありました。そこで、担当者が業務を行えなくなったケースに備え、クラウドを使ってのデータ管理と、業務の一部を依頼する外注業者の選定を行いました。そうして、いざというときに引き継げる体制を整えています。

リモートワークや時差出勤を積極的に行い、オフィスの密を避けた

Q.BCP策定過程で苦労したことは何ですか?

とくに大変だったのは、社内で情報を共有するためのシステムの構築や、代替者を立てる手順の策定です。お客様とHPの更新を担う担当者は「1を言えば10を知る」という関係になっているので、代替者では効率が下がる可能性が高いです。それでも、自社の事情でHPの更新を止めてしまうことは出来ないので、外注や社内で代替者を立てることを決めました。今まで外注を想定していなかった業務のアウトソーシングにも本格的に取り組むきっかけになりましたね。

Q.現状のコロナ禍において、計画に基づき具体的に行っていることは何ですか?

私を含め、社員には可能な限りリモートワークをしてもらい、時差出勤や半日出勤などを積極的に行っています。
社内にいるときも必ずマスクを着用し、オフィスの出入り口には手指消毒用のアルコール消毒液を4種類設置しました。当社に配達に来た宅配業者の方も使ってくれているようで、設置したメリットを感じています。

オフィス出入り口

Q.日常業務でBCPを策定した効果はありますか?

幸いなことに、BCPを策定して1年以上経ちましたが、2022年2月現在まで発動していません。なので、BCPの策定による効果は、緊急時に取るべき行動がわかる“安心感”を得たことですね。
また、リモートワークの範囲を広げましたが、生産性には大きな影響は出ていないので、社員たちが自宅で集中して業務に取り組んでくれている結果だと感じています。

Q.公社の支援に対するご感想は?

勉強会に参加し、そのあとにコンサルタントの方にご相談しました。当社に来てもらい、1日がかりでBCP策定に必要な要件を話し合ったのを覚えています。大変な作業でしたが、さまざまな角度で指導してもらい、本当に助かりました。自社内では見えてこない指摘も多く、とても勉強になりましたね。

Q.BCPを今後御社の企業経営にどう生かしたいですか?

現在は、全社員がBCPを確認できるように、データを社内共有のサーバーにアップしています。今後、もしも新型コロナ以外の感染症が流行した際も、きっと役に立つはず。今は広く提示はしてはいませんが、感染症対策のBCPを策定していることを自社のHP上で告知すれば、お客様にも安心していただける要素になるのでは、と期待しています。