株式会社リサシステム 代表取締役 篠﨑忠生氏

Q.会社の概要を教えてください。

平成2年の設立当初からソフトウェア開発を行っています。最近では、電子黒板用ソフトウェアを手掛けており、文教用の電子黒板とともに、災害時にも活用できるテーブル型会議システムも展開しています。事業はオフィスでの開発作業が8割。また、派遣事業の許可を取っていますので、2名ほど顧客企業へ派遣しています。受託開発が中心ですが、お客様の要望に応じて派遣にも対応します。社員は役員2名以外で12名、全員がソフトウェアエンジニアです。

Q.なぜBCPに取り組もうと思ったのですか?

一番大きなきっかけは、取引先から弊社のBCPについて質問を受けたことです。社内では東日本大震災の教訓から、震災が発生した場合の初動についてきめ細かく練っていたつもりでした。たとえば、「帰社日」といって、全員が会社に集まる日を毎月設けて、その時に声かけ訓練などを行っています。また、オフィスが入居する「まちだテクノパーク」の入居企業とともに毎年11月に避難訓練を行います。それから、近隣の都立公園で開かれる防災イベントにも参加しています。備蓄については、社員の住まいが一番遠いところで歩いて2時間なので、災害時にはまず全員を帰宅させることにし、帰宅支援グッズをリュックサックに入れて、その中に備蓄を入れて用意しています。しかし、今回の公社さんのセミナーに参加して初動後のことをお聞きするなかで、やはり全然なっていないことが分かりました。

事務所が入居する建物外観

Q.策定したBCPの概要を教えてください。

今回策定したBCPでは、BCP発動の見極め、備蓄、帰宅支援といったところに重点を置いています。まず、当社の場合、お客様に商品を納めるにあたって障害をいかに除くかが中心になります。電気・通信は不可欠ですので、最低限の蓄電池は備えなければならないことが明確になりました。非常電源は建物に備わっていません。一方で、停電の影響をなるべく受けないようにするため、デスクトップPCで開発してきたものをノートPCに切り替えました。ノートPCの方が電力の瞬断に強いためです。データのバックアップについては、各社員にデバイスを渡して平時からバックアップし、発災後も頻繁に保存します。
安否確認は、従来からメーリングリストで全員に発信し、全員が返信、共有するかたちをとっていましたが、現在はチャットも使います。発災後は帰宅を優先しますが、帰れない場合には近隣に小学校の避難所がありますので、そちらに避難待機してもらうこともできます。発災後の出社は強制せず、まず会社の安全確認を行い、出社の可否を発信します。
今回は盛り込んでいませんが、今般の新型コロナウイルス感染症の影響から、出勤できない場合に備えて自宅から参加するネットミーティングの予行演習を「帰社日」に行いました。リモートワーク体制の構築については、セキュリティの課題はありますが、実際に出社できない場合に備えて取り組む必要があると感じています。今般の感染症対策では、通用口にアルコール消毒を設置し、タイムカードの横に「出勤したら先ず手洗い」というポスターを貼って注意喚起しています。
そのほか、今回のBCPには、外注先や派遣先への対応も策定しています。社員を派遣している際に震災が起きたら、社員はまず取引先の指示に従います。その後、両社間で連絡をとりながら対応を判断します。派遣した社員が怪我をした場合などは、代わりを立てて派遣することになります。外注先は地域的に分散できるのが理想ですが、どうしても都内に集中しているのが現状です。

事務所内の様子

Q.BCP策定過程で苦労したことは何ですか?

やはり電力が使えない場合の想定です。非常電源による対応も継続に限度があり、費用的な面も含めて、どこまで対応するかという判断が難しいところでした。一方で、電力復旧後の瞬断によってデータを失うことも非常に怖いため、その点を意識して取り組みました。

Q.日常業務でBCPを策定した効果はありますか?

策定したのが今年1月ですので、まだ会社全体への浸透は弱いと思います。ただ、策定に関わった社員をはじめ、意識は高く持っていると思います。これから広げていく上で、いい布陣を敷けたという気がします。今後、取引先に対してもBCP策定をPRしていきます。電子商取引の条件としてBCP対応が加わることは、受託の増加にもつながると思います。

Q.公社の支援に対するご感想は?

最初の半日のセミナーに参加し、知識の不足や時間的制約もあって消化不良なところがありましたが、コンサルタントの方に短時間でまとめていただき、実際に策定できたことは非常にありがたく思います。コンサルタントの方の具体的な進め方が上手で、当社側がどうしても拘ってしまうところを柔軟に導いていただきました。押しつけ的なところもなく、フレンドリーな雰囲気をつくっていただきました。

Q.BCPを今後御社の企業経営にどう生かしたいですか?

これまで、実際に被災した時にどうするかという羅針盤もありませんでしたし、まだできていないものもありますが、やるべきことは明確になりました。当社は小規模のため、私が一人で何でもやってしまうところがあります。しかし、例えば被災状況を確認するチェックリストを事前につくっておくことで、社員各自が責任を担い、意識を高められる。これは経営においても有効だと思っています。責任者だけが知っていればいいのではなく、役割を分担することで、社員全員が危機意識を持って対応できるようにしていきたいと思います。今年8月にはBCPに沿った訓練を行う予定です。