株式会社シオザワ リンクル事業部統括 取締役 太田理恵氏

Q,会社の概要を教えてください。

当社は、今年で創業81年の紙の卸業を生業とする企業です。「紙の卸し」を中心に、紙に係わる仕事として、カレンダーなどをデザインする「企画制作事業」、企業から出る機密文書などの廃棄や処理に特化した「機密文書処理事業」の3つの事業を柱としています。今後は、卸業だけでは難しい面もありますので、紙に係わる総合商社として、多くのお客様により高い満足を感じて頂ける”ONLY ONE”企業を目指して紙ビジネスの新たな可能性を追求していきます。

本社外観 シオザワの文字を数字に置換え「4030(ヨンマルサンマル)ビル」と呼ぶ

Q,なぜBCPに取り組もうと思ったのですか。

私が統括している「機密文書処理事業」は、官庁、警察をはじめ、企業様の機密文書を扱う関係から、何年も前にISO27001を取得していました。当然ながらISOの取得は取引の条件でした。ISOではBCP同様、緊急時に何をすべきかが明確に記述されています。しかし、緊急時の連絡網などは作成していましたが、残念ながら的確にアップデートできていませんでした。実は、お客様からも「御社にはBCPがあるのか?」などのお問い合わせもいただいていましたし、逆に当社の協力企業様がBCPに取り組んでいるのかを知っておく必要もありました。そんな折、当社の総務から、公社のBCP策定コンサルティングや助成金の話を聞き、迷わず活用することを決意しました。企業としての事業継続の理念は理解していましたし、やらなければいけないことだと思っていましたから、全社的にもBCP導入への抵抗感は無かったですね。

Q,策定したBCPの概要を教えてください。

事業継続のためには、従業員の無事が前提ですから、最初にやるべきことは安否確認です。安否確認の後には何をすべきか、具体的なアクションはマニュアルに落とし込んでいます。事業の復旧までの期間は、従業員にもお客様にも不安を感じさせないことが最優先の課題です。
当社の事業には3つの柱があります。どこに優先順位をつけるのかが難しかったです。経営として考えた時、紙の卸しが最も大きい商売ですから、ここは外せません。しかしこの事業は永い歴史もあり複雑です。そこで紙の卸しの関係者を集め、協議して進めていきました。彼らはベテランですからマニュアルが無くてもノウハウはあります。実際には、ベテランたちのノウハウをマニュアルとして明文化していく作業でしたね。様々なセクションがあるので、会議が長引くと、論点がずれてくる場合もある。会議の交通整理が私の仕事でした。

社内の様子

Q,BCP策定過程で苦労したことは何ですか?

幸いな事に、メンバーの多くから「BCPを作りたい」という強い思いを感じられたので、大きな苦労はありませんでした。

Q,日常業務でBCPを策定した効果はありますか?

今後は、当社がBCPを策定している企業であることを、お客様にも積極的にアピールしようと考えています。お客様からの信頼をいただく事は、将来的に仕事上の大きなメリットに繋がると確信しています。今後は、来期以降計画している防災・避難訓練などを実施し、3つの事業部に係わる従業員の連帯感を高めていきたいと考えています。毎年の訓練による繰り返しの啓発活動の中で、縦割りの事業部に横串を通して、より強い企業にしていきたいですね。個人的にもこれは大きな付加価値になるのではないかと期待していますし、そんな風に社内を誘導していきたいとも思っています。来期の大きな課題ですね。

Q,公社の支援に対するご感想は?

BCPは、費用や人手の問題もあり中小企業では中々着手しにくいテーマです。BCPは知っていても、何から始めたらよいのか分からないのが実際のところです。当社の様にゼロから取り組もうと思っている企業にとっては、助成金の制度もあり、非常にありがたい支援でした。導入のきっかけを作っていただいたのは良かったですし、短時間で効率よく策定できたと実感しています。実践的なコンサルティングも助かりました。策定への取り組みもスムーズだったと思います。

Q,BCPを今後御社の企業経営にどう生かしたいですか?

今回、当社が取り組んだBCPは、あくまで最初のステップに過ぎません。現在のところ具体的な問題点などは見えていませんが、将来は色々問題も見えてくるでしょう。そんな様々な問題解決のために、さらに横の繋がりを強化する必要もあるし、若い従業員達の違った発想や方法を取り入れる必要もあると思います。
私は、BCPの様な考え方は、世の中の流れの中で進化していくものだと思っています。これからは、毎年BCPの訓練や検証を何度も繰り返していく中で、今回策定したBCPとはまた違った発想の対策も見えてくるかもしれないし、より良いBCPを模索していけるのではないかと思っています。特にこれから未来を担っていく若い従業員達にこそ、BCPを進化させていって欲しいし、そんなカタチに会社を誘導していきたいと思っています。

(了)