宮脇車輌工業株式会社 代表取締役社長 宮脇法彦氏

Q,会社の概要を教えてください。

弊社は1985年に設立されました。事業内容は主に、東京メトロ様の鉄道車両の更新工事、修繕工事と、東京都交通局様の東京さくらトラムの定期検査を受託しています。
その他、鉄道事業に関連する車両基地や駅等の建築設備全般の保守管理業務も行っています。
また、関東近郊の小、中、高学校の空調設備の設置、メンテナンス等も行っています。
より良い人材を育成し、各現場へ人材を派遣し首都の交通網を守るのが弊社の仕事です。

Q,なぜBCPに取り組もうと思ったのですか。

東武線の竹ノ塚駅での踏切事故の際、東京メトロ様の車両が乗り入れていましたので、弊社が復旧対応に携わりました。大きな車両事故でしたので本当に大変でしたが、従業員の迅速な対応により早期に復旧させることができました。この時に、お客様から「何かあった時は、やっぱり宮脇さんだよね。」と、嬉しいお言葉を戴きました。
企業として大変光栄に感じています。
BCPの理念は理解していましたので、東日本大震災やその後のタイでの大洪水による被害を目の当たりにし、強い危機感を抱きました。業界内の同業他社さんはまだ手がけていませんでしたが、弊社は首都の交通網を支える裏方としてBCPを策定する必要があると思いました。そんな折、中小企業庁の事業継続計画をダウンロードして勉強し始めたのがきっかけです。

Q,策定したBCPの概要を教えてください。

弊社の仕事を支えているのは人ですから、従業員の安否確認と必要な人材確保が中心です。東日本大震災の時点でも緊急連絡網は機能していました。ただ、地震の影響で電話は使えませんでしたので、ファックスを使いました。各現場から「全員無事です。備品も大丈夫です。本日現場は何名泊まり、何名返します。」とファックスが送られてきました。
今回は、新たに安否確認システムを導入しました。海外にサーバーを持つシステムで災害時も確実に機能します。まずは社員の安否確認が的確にできれば、その後は自ずと事業復旧は可能だと思っています。
また、ISO9001の中で協力会社の妥当性を検証する「供給者リスト」を作成していたので、これを活用して詳細なステークホルダーのリストを作り直しました。
今回の取り組みにあたっては、BCPの前段階をある程度整備してありましたので、比較的短期間で移行できたと思っています。

Q,日常業務でBCPを策定した効果はありますか?

従業員から自主的に声が上がるようになりました。ISOでもBCPでも、常に継続的な改善が求められます。今回のBCP策定作業を通じて、従業員から「防災グッズを更新しましょうか?社員教育にBCPを取り入れないといけませんね。」そんな意見が自発的に上がってくるようになりました。社内の改善意識も高まっていると感じています。

社内の様子

Q,公社の支援に対するご感想は?

私達もBCP策定にあたり、いくつかのセミナーにも参加しました。他社のセミナーがBCPの解説などに留まるのに対しBCP策定講座が非常に有効でした。公社のセミナーは結構踏み込んだ内容で大変勉強になりました。ブレーンストーミングやQ&Aなど、BCPの具体的なフォーマットなども提供してもらい好印象でしたので、このまま継続してコンサルティングも受けることにしました。BCPの考え方や意義を深く理解することができたので、非常に意義ある体験だったと思っています。

Q,BCPを今後御社の企業経営にどう生かしたいですか?

弊社は、異常時発生時に力を発揮する存在でありたいと思っています。災害時の準備はいつでも出来ている。そんな存在でありたいですね。
各現場では、お客様と一緒に日常の安全パトロールや避難訓練、消防訓練、脱線復旧訓練を実施しています。
弊社としては、BCPの活動はまだまだ始まったばかりです。四半期に一度、BCPの推進メンバーで演習結果の報告会を実施し、問題点を抽出し改善点を検討しています。

(了)